
「エンディングノートを書こうと思っているのに、何から始めればいいかわからない」
「項目が多すぎて、どこまで書けばいいのかわからない」
そんなふうに感じて、ノートを手に取ったまま棚にしまってしまった方は、決して少なくありません。
エンディングノートは、法律の勉強も難しい言葉も必要ありません。
「自分のことを、大切な家族に正しく伝えるためのメモ」だと思えば、ぐっと書きやすくなります。
この記事では、高崎市の相談の現場で実際に伝えられている「家族に伝えるべき10項目」を軸に、エンディングノートの書き方を一つひとつ丁寧に解説します。
「書き終えた後、家族がどれほど助かるか」を想像しながら、ぜひ一緒に考えていただければ幸いです。
エンディングノートとは何か・遺言書との違い
エンディングノートは、「自分に万一のことがあったとき、家族が困らないように情報や希望を伝えるためのノート」です。
法的な拘束力はありませんが、遺族にとっては何よりも心強い「道しるべ」になります。
この位置付けを最初に理解しておくことで、「完璧に書かなければ」というプレッシャーから解放され、書き始めるハードルが一気に下がります。
法的効力はないが「家族の道しるべ」になる
エンディングノートには法的効力がありません。
だからこそ、自由に・正直に・自分の言葉で書くことができます。
「葬儀はシンプルにしてほしい」「延命治療は望まない」「あの預金通帳の場所はここ」といった情報は、家族が直面する場面で本当に役立ちます。
実際の終活相談の現場では、「親が亡くなったとき、どこに口座があるかわからず解約に1年以上かかった」「葬儀の形式で兄弟間で意見が割れてもめた」という話を何度も耳にします。
エンディングノートがあれば、こうした混乱の多くを未然に防ぐことができます。
「家族に迷惑をかけたくない」という思いがあるからこそ、書く価値があります。
遺言書と使い分けるポイント
エンディングノートと遺言書は、目的が異なります。
遺言書は、財産の相続先を法的に指定するための文書であり、一定の様式(自筆証書遺言・公正証書遺言など)を守らなければ効力を持ちません。
一方のエンディングノートは、様式自由・内容自由の「意思の記録」です。
財産の分配についての法的な意思表示をしたい場合は、遺言書を別途作成する必要があります。
「エンディングノートに財産は〇〇に渡してほしいと書いたから大丈夫」と思っていると、実際には法的効力がないため遺族間でのトラブルにつながることもあります。
エンディングノートには「思い・希望・情報の伝達」を、遺言書には「財産分配の法的意思表示」を、それぞれ使い分けることが最も確実です。
法務省が提供する遺言書に関する情報(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji06.html)も参考にしてください。
高崎市の終活セミナーが伝える10項目の全体像
高崎市内で開催される終活セミナーや、高崎市社会福祉協議会の相談窓口では、エンディングノートに記載すべき内容として概ね共通した項目が案内されています。
その核心は、「家族が最もパニックになる場面で必要な情報を、あらかじめ整理しておく」という考え方です。
10項目を大きく4つのグループに分けると、全体像がつかみやすくなります。
| グループ | 項目番号 | 内容 |
|---|---|---|
| 自分自身のこと | ①②③ | 基本情報・健康・医療・介護希望 |
| お金・資産のこと | ④⑤⑥ | 預貯金・保険・年金・不動産 |
| 葬儀・お墓のこと | ⑦⑧ | 葬儀希望・お墓・納骨 |
| デジタル・メッセージ | ⑨⑩ | パスワード管理・家族へのメッセージ |
この10項目を全部一度に書き上げる必要はありません。
書けるところから・書きやすいところから始めることが、継続のコツです。
項目①〜③:自分自身のことを伝える

「自分自身のこと」は、エンディングノートの中で最も書きやすく、かつ家族が読んで最も温かみを感じる部分でもあります。
単なる情報の記録ではなく、「自分という人間を残す」という意味合いがあることを意識すると、書く気持ちが変わってきます。
①基本情報・生い立ちと大切な思い出
氏名・生年月日・本籍地・住所といった基本情報を記録しておくことで、家族が各種手続きを行う際にスムーズに進められます。
本籍地は意外と子どもが知らないケースが多く、戸籍の取得の際に困ることがあります。
生い立ちや思い出については「書かなければいけない情報」ではありませんが、実は遺族にとって最も何度も読み返す部分です。
「どんな子ども時代を過ごしたか」「どんな仕事をしていたか」「人生で一番嬉しかった瞬間は何か」といったエピソードは、書いた人だけが知る宝物です。
高崎市で開催されている終活セミナーでも、「事実の記録だけでなく、あなたの人生の物語を書いてほしい」と伝えているケースが多くあります。
書くことで、自分の人生を改めて肯定できるという効果もあります。
②健康・医療に関する情報
かかりつけ医の名前・連絡先・通院している病院の一覧・服用中の薬の名前と用量を記録しておきます。
救急搬送された際や、本人が意識を失っている場面で、この情報が命を左右することがあります。
「どの薬を飲んでいるか知らない」という家族は非常に多く、高齢者の救急搬送時に薬の情報が伝わらないことが治療の妨げになるケースが実際にあります。
お薬手帳のコピーをエンディングノートに挟んでおくだけでも、大きな助けになります。
血液型・既往症・アレルギーの有無なども記録しておくと、緊急時の対応がより適切になります。
かかりつけ医への相談は、全国の医療機関を検索できるNHKの「病院を調べる」サービス(https://www.nhk.or.jp/kenko/)なども活用できます。
③介護・延命治療についての希望
「もし自分が介護が必要な状態になったら」「意識がない状態で延命治療を続けることについて、自分はどう考えるか」という希望を書いておくことは、家族にとって非常に重要な道しるべになります。
医療の現場では、家族が「本人の意思がわからない」という理由で判断を迫られ、心理的に非常に苦しい状況に置かれることがあります。
延命治療の希望・在宅介護か施設介護かの希望・介護してほしい人への希望などを書いておくことで、家族が意思決定を行う際の拠り所になります。
「胃ろうは望まない」「自宅で過ごしたい」「家族に負担をかけたくないので施設を優先してほしい」といった具体的な言葉で書くことが、家族への最大の贈り物になります。
厚生労働省が推進する「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン」(https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000197665.html)も参考にしてください。
項目④〜⑥:お金と資産のことを整理する
お金と資産に関する情報は、エンディングノートの中で最も実務的に重要な部分です。
家族が「どこに何があるか」を知らない状態で本人が亡くなると、預金の解約・保険金の請求・不動産の手続きなど、すべてがストップします。
手続きに何ヶ月もかかり、精神的・経済的に消耗した遺族の話は珍しくありません。
書くことへの抵抗感がある方も多い部分ですが、「家族のために」という視点で向き合ってみてください。
④預貯金・金融機関の情報
口座を持っている金融機関名・支店名・口座の種類(普通・定期など)を記録します。
口座番号や残高まで書く必要はありませんが、「どの銀行に口座があるか」だけでも記録しておくと、家族が解約手続きを行う際の出発点になります。
「ゆうちょ銀行・○○信用金庫・〇〇銀行の3行に口座あり」というだけでも、家族が銀行を一軒一軒当たって確認する手間を大幅に省けます。
通帳やキャッシュカードの保管場所を書いておくことも非常に有効です。
ただし、暗証番号はエンディングノートに書かないことを強く勧めます。
エンディングノートは遺言書と異なり封印できないため、悪意のある第三者に見られた際のリスクがあります。
⑤保険・年金の情報
加入している保険(生命保険・医療保険・火災保険など)の保険会社名・証書番号・担当者の連絡先を記録します。
保険金を受け取る権利があるのに、保険の存在を知らないために請求できないという「もらい忘れ」は、非常に多く起きています。
生命保険文化センターの調査でも、生命保険の保険金未請求が社会問題として指摘されています。
生命保険文化センター(https://www.jili.or.jp/)のサイトでは、保険に関する基本的な知識が整理されています。
年金については、受給している年金の種類(老齢基礎年金・厚生年金など)と、日本年金機構での照会方法を書いておくと便利です。
日本年金機構(https://www.nenkin.go.jp/)の「ねんきんネット」を活用すれば、年金記録を本人または遺族が確認できます。
⑥不動産・その他資産
所有している不動産(自宅・別荘・田畑など)の所在地・登記の状況・関係する書類の保管場所を記録します。
不動産は相続手続きが特に複雑であり、登記名義の変更(相続登記)には相続人全員の同意と印鑑が必要です。
「誰が相続するか」についての希望は、エンディングノートではなく遺言書に記載することで法的効力が生まれます。
エンディングノートには「何を持っているか・書類はどこにあるか」を記録し、相続の意思表示は遺言書で行うという役割分担が基本です。
自動車・貴金属・株式・投資信託などの金融資産についても、同様に「何がある・どこに書類があるか」を簡潔に記録しておきます。
項目⑦〜⑧:葬儀とお墓についての希望
葬儀とお墓に関する希望は、遺族が最もタイムプレッシャーの中で判断を迫られる事項です。
死亡から24時間以内には遺体を安置し、数日以内には葬儀を執り行う必要があります。
感情的に消耗しているタイミングで、葬儀形式・費用・参列者の範囲を即座に決めなければならない遺族の負担は、想像以上に大きいものです。
希望を記録しておくことは、家族への最大の配慮の一つです。
⑦葬儀の希望(形式・規模・費用感)
どのような葬儀を希望するかを、できるだけ具体的に書いておきます。
「家族だけで静かに送ってほしい」「盛大にたくさんの洋花で送ってほしい」「通夜は省略して一日葬でよい」「費用は〇〇万円以内で収めてほしい」といった言葉は、家族が迷ったときに役に立ちます。
連絡してほしい人・してほしくない人のリストをあらかじめ作成しておくことも非常に有効です。
「知人・近所の方への連絡はしてほしい」という希望も、書いておくことで家族が判断しやすくなります。
葬儀社をあらかじめ自分で選んでおくことも可能です。
事前相談・見積もりを行っておくことで、家族が葬儀社選びに迷う時間を省けます。
⑧お墓・納骨についての希望
現在、お墓がある場合はその所在地・宗旨・管理している寺院・墓地の名称と連絡先を記録します。
「先祖代々のお墓に入ってほしい」「樹木葬を希望する」「永代供養にしてほしい」「新たにお墓を建てたい」といった希望を明記しておくことが大切です。
書いておくだけでなく、生前に家族と話し合っておくことが、死後のトラブルを防ぐ上で最も効果的です。
項目⑨〜⑩:デジタル情報と家族へのメッセージ
近年、終活の中で急速に重要性が高まっているのが「デジタル情報の整理」です。
スマートフォン・インターネットバンキング・SNS・サブスクリプションサービスなど、デジタルに紐づいた資産や情報は、パスワードがなければ家族がアクセスすることすらできません。
そして最後の項目は、「あなたの言葉で家族に伝えるメッセージ」です。
情報の整理が終わったら、最後にこの項目を書くことで、エンディングノートは単なる「情報の棚卸し」から「あなたの人生の証」へと変わります。
⑨デジタル遺産・SNS・パスワード管理
スマートフォン・パソコンのロック解除方法、利用しているメールアドレス・SNSアカウントの一覧、インターネットバンキングの利用有無、サブスクリプションサービス(Netflix・アマゾンプライムなど)の契約状況を記録します。
サブスクリプションサービスは、解約しなければ自動的に料金が引き落とされ続けます。
亡くなった方のクレジットカードから引き落とされていることに気づかず、数ヶ月間支払い続けてしまったというケースは実際によく起きています。
パスワードの記録については、エンディングノート本体ではなく別の安全な場所(鍵付きの場所や信頼できる家族のみが知る場所)に保管することを推奨します。
または、パスワード管理サービスのマスターパスワードのみをエンディングノートに書いておく方法も有効です。
SNSアカウントについては、「アカウントを削除してほしい」「追悼アカウントとして残してほしい」などの希望も書いておくと、家族が判断しやすくなります。
デジタル遺産に関する詳細情報は、総務省の「デジタル活用の促進」関連ページ(https://www.soumu.go.jp/)でも確認できます。
⑩家族・大切な人へのメッセージ
エンディングノートの最後に書くべきは、家族や大切な人へのメッセージです。
「ありがとう」「幸せな人生だった」「あなたたちが誇りだ」という言葉は、どんな財産よりも遺族の心に響きます。
高崎市の終活セミナーの現場でも、「メッセージを書いたとき、初めて涙が出た」という参加者の声が多く聞かれます。
普段は照れくさくて言えない感謝の言葉を、ノートに書き留めることで伝えることができます。
配偶者・子ども・孫・友人など、伝えたい相手ごとに分けて書くと、それぞれの受け取り方がより深いものになります。
「書いた後で何度でも書き直していい」というのがエンディングノートの良さです。
その時々の気持ちや状況に合わせて、言葉を更新し続けることができます。
書いた後に必ずやっておくべき3つのこと
エンディングノートは「書き上げたら終わり」ではありません。
書いた後の保管・共有・見直しという3つのアクションを取ることで、初めて「機能するノート」になります。
書いたことを誰も知らなければ、存在しないのと同じです。
保管場所と知らせ方
エンディングノートは、信頼できる家族が確実に発見できる場所に保管することが必要です。
「引き出しの中」「本棚の〇〇の横」といった具体的な場所を、少なくとも一人の家族に伝えておきます。
緊急時にすぐ取り出せるよう、大きな金庫や鍵の多い場所への保管は避ける方が現実的です。
エンディングノートの存在と保管場所を伝えること自体が、「家族と終活について話し合うきっかけ」になることも多くあります。
「もし何かあったときは、〇〇の引き出しを見てほしい」という一言が、家族との大切な会話の入り口になります。
保管場所の選択肢として、自宅の安全な場所に加え、信頼できる子どもの元に写しを預けておく方法も有効です。
定期的な見直しのタイミング
エンディングノートは一度書いたら「完成」ではなく、人生の変化に合わせて更新し続けるものです。
見直しのタイミングとして適切な時期としては、以下が挙げられます。
- 誕生日(年に一度の自分への向き合い)
- 大きな病気・入院の後
- 家族の状況が変わったとき(結婚・離婚・孫の誕生など)
- 引っ越しや財産の変化があったとき
- 保険や年金の内容が変わったとき
「去年書いたとき」と「今の自分の希望」が変わっていることは自然なことです。
定期的に見直すことで、常に「今の自分の意思」をノートに反映させておくことができます。
見直しの記録として、更新した日付をノートに書き添えておくと、最新の内容がどれかが家族にも一目でわかります。
FAQ|エンディングノートの書き方に関するよくある質問
Q1. エンディングノートは市販のものを使わなければいけませんか?
市販のエンディングノートを使う必要はありません。
普通のノートでも、パソコンで作成した文書でも構いません。
市販のエンディングノートには、項目があらかじめ設けられていて書きやすいというメリットがあります。
高崎市社会福祉協議会や地域包括支援センター、保険会社などが無料で配布しているエンディングノートもありますので、まずそうしたものを活用してみることを勧めます。
Q2. 全部の項目を書き切らないといけませんか?
全項目を書き切る必要はありません。
書けるところから・書きやすいところから始めることが長続きのコツです。
特に重要な項目を優先するとすれば、「医療・介護の希望(③)」「金融機関の情報(④)」「葬儀の希望(⑦)」の3つです。
この3項目だけでも記録しておくと、家族が最も困る場面で大きな助けになります。
Q3. 子どもにエンディングノートを書いていることを伝えるのが気まずいです。
「死の話をしているようで気まずい」という気持ちはとても自然です。
「もしものときのために、大事なことをまとめておこうと思って」という言い方なら、子どもも受け入れやすいことが多いです。
高崎市の終活セミナーでは、「終活は死の準備ではなく、今をよりよく生きるための活動」という考え方が共通して伝えられています。
家族と一緒にセミナーに参加することで、自然に話し合いのきっかけが生まれることもあります。
Q4. エンディングノートに書いた内容は、法的に有効ですか?
エンディングノートには法的効力はありません。
「財産をこう分けてほしい」という内容を法的に有効にするためには、遺言書として作成する必要があります。
エンディングノートは「意思・希望・情報の伝達」のためのツールとして位置付け、財産の法的な分配については別途遺言書の作成を検討してください。
Q5. エンディングノートを書いた後、どこかに届け出る必要はありますか?
届け出は不要です。
エンディングノートは完全に私的な文書ですので、どこかに提出したり登録したりする義務はありません。
書いた後は保管場所を家族に伝えるだけで十分です。
ただし、遺言書(特に公正証書遺言)については公証役場での手続きが必要です。
Q6. パスワードはエンディングノートに書いても大丈夫ですか?
エンディングノートへのパスワードの直接記載は推奨しません。
エンディングノートは基本的に鍵をかけて保管するものではなく、紛失・盗難のリスクがあります。
パスワードは、別の鍵付きの場所に保管するか、信頼できる特定の家族のみに口頭で伝えておく方が安全です。
まとめ
エンディングノートに書くべき10項目は、「自分自身のこと」「お金・資産のこと」「葬儀・お墓のこと」「デジタル情報と家族へのメッセージ」という4つのグループに整理されます。
「今日は①の基本情報だけ」「来週は医療の希望を書こう」という小さなステップで構いません。
大切なのは「書き始めること」です。
高崎市では、社会福祉協議会・地域包括支援センター・終活セミナーなど、サポートを受けながら終活を進められる環境が整っています。
一人で悩まず、こうした場を積極的に活用することを勧めます。
「家族に迷惑をかけたくない」という思いが終活のきっかけになることが多いですが、エンディングノートを書き終えたとき、多くの方が「書いてよかった。なんだかすっきりした」と感じると言います。
それはきっと、自分の人生を自分の言葉で整理し、大切な人への思いを形にできたからではないでしょうか。
この記事が、高崎市で終活を始める一歩を踏み出すきっかけになれば、とても嬉しいです。
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