
「葬儀がようやく終わった。でも今度は相続税の申告をしなければならない」
そんな状況の中で、この記事を読んでいる方も多いと思います。
実は、葬儀にかかった費用の多くは、相続税の計算において「葬式費用控除」として財産総額から差し引くことができます。
この制度を正しく活用するかどうかで、納税額が数十万円単位で変わることがあります。
逆に言えば、知らないまま申告してしまうと、本来払わなくてよかった税金を余分に支払うことになりかねません。
この記事では、葬式費用控除の基本的な仕組みから、控除できる費用・できない費用の具体的な区別、申告書への記載方法、高崎市(高崎税務署管轄)における申告の流れまで、現場の視点から丁寧に解説します。
相続税の申告期限は「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」と定められています。
時間には限りがありますので、早めに全体像を把握してください。
葬式費用控除とは何か――相続税を減らせる仕組みの基本
葬式費用控除とは、相続財産の総額から葬儀にかかった費用を差し引いて、課税対象となる金額を減らすことができる制度です。
相続税法第13条に明確に規定されており、正しく適用すれば合法的に納税額を抑えることができます。
「節税」と聞くと後ろめたさを感じる方もいますが、これは国が認めた正当な控除制度です。
正確な知識を持って申告することは、相続人として当然の権利です。
なぜ葬式費用が控除されるのか
葬式費用が控除される理由は、「被相続人(亡くなった方)の死亡に伴って必然的に生じる費用であり、財産を承継するためにやむを得ない出費である」という考え方に基づいています。
相続財産を受け取るためには、まず故人を見送らなければなりません。
その費用は相続人が否応なく負担するものであるため、相続財産から差し引いて課税するのが公平だという発想です。
現場で相続税申告に関わってきた経験から言うと、この控除を見落としている遺族は意外と多くいます。
「葬儀費用は葬儀費用」「相続税は相続税」と別々に考えてしまい、両者が連動していることに気づかないケースが非常に多いのです。
控除の仕組み:課税遺産総額から直接マイナスされる
葬式費用控除は、相続税の計算における「課税価格」を減らすために使います。
計算の流れはこうです。
まず、亡くなった方の財産(預貯金・不動産・株式など)をすべて合計します。
そこから「債務(借金・未払い税金など)」と「葬式費用」を差し引きます。
残った金額が「課税価格」となり、ここから基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)を引いた金額に税率をかけて相続税額が決まります。
つまり、葬式費用が100万円あれば、それがそのまま課税価格から100万円マイナスされます。
相続税率が20%のケースであれば、20万円の節税効果があるということです。
参考:国税庁「相続税の計算」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4152.htm
葬式費用として「控除できる費用」の一覧

控除できる費用と控除できない費用を正確に区別することが、葬式費用控除を使いこなすうえで最も重要なポイントです。
国税庁の通達および実務上の取り扱いに基づいて、控除できる費用を具体的に解説します。
葬儀・告別式にかかった費用
葬儀社に支払った費用は、原則としてすべて控除の対象となります。
具体的には以下のものが含まれます。
- 葬儀一式費用(祭壇・棺・骨壷・遺影写真・司会進行など)
- 会場使用料(斎場・ホール使用料)
- 受付・案内スタッフの費用
- 霊柩車・マイクロバスなどの車両費用
- 返礼品(会葬御礼品)の費用
会葬御礼品(参列者へのお礼の品)は控除対象ですが、香典返しは対象外です。
この区別は非常に混同されやすいため、注意が必要です。
領収書は必ず保管してください。
葬儀社から明細書が発行されますが、項目ごとに金額が分かれているものを請求しておくと、申告時に迷いが生じません。
お布施・戒名料・読経料
僧侶(お坊さん)に支払うお布施・戒名料・読経料も、葬式費用として控除できます。
「お布施には領収書がもらえない」という不安をお持ちの方が多いですが、これについては次のH2で詳しく解説します。
金額の相場は地域や宗派によって異なりますが、高崎市を含む群馬県内では、通夜・葬儀のお布施として20万〜50万円程度、戒名料として20万〜100万円以上になることもあります。
金額が大きいだけに、確実に控除として計上することが重要です。
火葬・埋葬・納骨にかかった費用
火葬料金・骨壷代・埋葬料・納骨料は、すべて控除の対象です。
高崎市斎場(高崎市上中居町1002-1)での火葬にかかる費用も対象となります。
高崎市民が市内施設を利用する場合、火葬料金は市民料金で対応しているため領収書を必ず受け取ってください。
納骨の際に寺院や霊園に支払う納骨料・永代供養料のうち、「埋葬に直接関係する費用」は控除対象となりますが、管理費(年間管理料)は含まれません。
遺体の搬送費用
病院や施設から自宅や斎場へ遺体を搬送する費用も、控除の対象です。
遠方で亡くなった場合の長距離搬送費用も対象となります。
飛行機や新幹線を使った搬送の場合でも、実費として認められます。
なお、遺体の保冷・ドライアイス費用も、葬儀社の請求書に含まれていれば控除対象として扱えます。
葬儀前後の飲食費(通夜振る舞い・精進落とし)
通夜振る舞いや精進落としにかかった飲食費も、控除の対象となります。
「飲食費まで控除できるのか」と驚かれる方も多いですが、これは葬儀の慣行として不可欠な費用と認められているためです。
ただし、「関係者が会食しただけ」とみなされるような過度に豪華な飲食や、葬儀とは明らかに関係のない飲食は対象外となります。
目安としては、葬儀に参列した関係者への通夜振る舞い・精進落としの費用であれば問題なく認められます。
絶対に控除できない費用――見落としがちな落とし穴
控除できる費用があれば、当然できない費用もあります。
「これも控除できるだろう」と思って計上してしまうと、税務調査で指摘を受けるリスクがあります。
現場では、以下の費用が誤って計上されているケースを何度も目にしてきました。
香典返しの費用
香典返しの費用は、葬式費用控除の対象外です。
「葬儀に関する費用なのになぜ?」と思われるかもしれませんが、税法上の考え方では「香典は遺族が受け取るもの(相続財産とは別の収入)」であり、その返礼も遺族の行為とされているためです。
ただし、会葬御礼品(参列者全員に配る小さなお礼品)は控除対象です。
香典返しと会葬御礼品は混同されやすいので注意してください。
- 会葬御礼品:参列者全員に渡す(例:会葬礼状+小包み)→ 控除対象
- 香典返し:香典をくれた方に後日送る(例:カタログギフト・品物)→ 控除対象外
葬儀社の請求書に両方が含まれている場合は、必ず分けて計上してください。
墓石・墓地の購入費用
お墓の購入費用(墓石代・墓地の永代使用料など)は、葬式費用控除の対象外です。
これは「祭祀財産」として相続税の対象外に位置づけられているためです。
「葬儀を機に墓を買った」という場合でも、墓地・墓石の費用は控除に使えません。
なお、既存のお墓への納骨にかかる費用(納骨料)は控除対象ですが、墓の建立・購入にかかる費用は別物として扱われます。
この区別を間違えると、税務調査で修正申告を求められる可能性があるため要注意です。
初七日・四十九日などの法要費用
初七日・四十九日・一周忌など、法要にかかった費用は控除できません。
法要は「葬儀」ではなく「追善供養」であり、税法上は別の行為とみなされます。
ただし、近年は葬儀当日に「繰り上げ初七日法要」を行うケースが増えており、この場合は実務上「葬儀の一部」として認められるケースもあります。
繰り上げ初七日の扱いは税務署によって判断が異なる場合があるため、不明な場合は高崎税務署または税理士に確認することをおすすめします。
葬儀に参列するための交通費・宿泊費
相続人や遺族が葬儀に参列するために支出した交通費・宿泊費は、控除の対象外です。
「飛行機で帰ってきた」「ホテルに泊まった」という費用は、個人の事情による出費と見なされます。
遺族が支出した費用であっても、「葬儀そのものにかかった費用」でなければ控除対象にはなりません。
領収書がない費用(お布施など)はどう証明するか
葬式費用控除の実務で最もよく聞かれる質問が「お布施の領収書がないけれど大丈夫か?」というものです。
結論から言えば、領収書がなくても控除は認められます。
ただし、支払った事実を証明できる記録が必要です。
メモ書きでも認められる理由と条件
国税庁の通達では、お布施・戒名料のように「領収書を発行する慣行がないもの」については、支払いの事実を証明する書類として「メモ書き(覚書)」でも認められると明示されています。
これは現場でも広く確認されている実務上の取り扱いです。
ただし、そのメモ書きには一定の記載内容が求められます。
- 支払年月日
- 支払先(寺院名・僧侶の氏名)
- 支払った金額
- 支払った目的(読経料・戒名料など)
- 支払者(相続人)の氏名
これらが明記されていれば、メモ書きであっても税務調査で通用する証明書類として認められます。
参考:国税庁「葬式費用の範囲」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4129.htm
証拠として残しておくべき記録の作り方
実際の現場では、以下の記録方法を推奨しています。
まず、お布施を渡した直後に「支払記録メモ」を作成してください。
スマートフォンのメモアプリでも構いませんが、最終的には印刷して紙で保管することをおすすめします。
次に、寺院から「御礼状」や「お礼の手紙」を受け取っている場合は、その書類も一緒に保管してください。
「〇〇院住職△△様へ、戒名料として金□□円をお渡しした」という形の記録があれば、税務署の調査官も否定する根拠を持てません。
また、葬儀社が作成する「葬儀費用明細書」の中にお布施の金額が記載されている場合もあります。
葬儀社に依頼して、お布施の金額も明細に含めてもらうことで、書類の一元管理が可能になります。
葬式費用控除の計算方法と申告書への記載方法
葬式費用控除を実際に申告書に反映させる作業は、それほど難しくありません。
しかし、正確な記載をするためには手順を正しく把握しておく必要があります。
相続税申告書「第13表」の記載手順
葬式費用は、相続税申告書の「第13表(債務及び葬式費用の明細書)」に記載します。
第13表の「葬式費用の明細」欄に、費用の種類・支払先・金額を一つずつ記入します。
記載する内容:
- 費用の種類(例:葬儀一式費用・お布施・火葬料など)
- 支払先の名称(例:〇〇葬儀社・〇〇寺)
- 支払年月日
- 金額
すべての費用を合計した金額が「葬式費用の合計額」として課税価格から控除されます。
第13表に記載した合計額は、第11・11の2表(相続税の課税価格の計算明細書)に転記し、課税遺産総額の計算に反映させます。
国税庁のウェブサイトでは、申告書の様式と記載例が公開されています。
参考:国税庁「相続税の申告書等の様式一覧」https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/annai/sozoku-zoyo/annai/27.htm
複数の相続人で費用を負担した場合の扱い
葬儀費用を複数の相続人で分担した場合、それぞれが支払った金額を合計したものが控除対象となります。
重要なのは「実際に誰が支払ったか」ではなく「葬儀に要した費用の総額」です。
ただし、申告書への記載は「費用を実際に支払った者(喪主や代表相続人)」が行うのが一般的です。
実務上の注意点として、「喪主が立て替えて支払い、後で相続人間で精算する」というケースが多くあります。
この場合、立て替えた全額を第13表に記載しておき、相続人間の精算は別途(相続財産の分割協議の中で)行うとスムーズです。
相続人間のトラブルを防ぐためにも、誰がいくら払ったかの記録を葬儀直後から残しておくことを強くおすすめします。
また、「相続放棄をした相続人が負担した葬式費用」は控除できません。
相続放棄をすると相続人ではなくなるため、その方が支払った費用は「相続に関係のない費用」として扱われます。
この点は見落としやすいポイントです。
高崎市における相続税申告の流れと管轄税務署
葬式費用控除の知識を持っていても、実際の申告手続きを把握していなければ活用できません。
高崎市在住の方が相続税を申告する際の流れを、具体的に確認しておきましょう。
申告期限と管轄税務署(高崎税務署)
相続税の申告期限は、「被相続人が亡くなったことを知った日の翌日から10ヶ月以内」です。
例えば、2024年4月1日に亡くなった場合、申告期限は2025年2月1日となります。
この期限を過ぎると「無申告加算税」や「延滞税」が課される可能性があるため、早めに準備を始めることが重要です。
高崎市在住の方の管轄税務署:
高崎税務署
住所:高崎市柳川町55-7
電話:027-323-2261(代表)
受付時間:月〜金曜 8:30〜17:00(祝日・年末年始を除く)
相続税の申告書の提出は、被相続人の住所地を管轄する税務署に行います。
亡くなった方が高崎市在住であれば、高崎税務署が窓口となります。
申告書は郵送でも提出できますが、疑問点がある場合は直接窓口に持参して確認しながら提出するほうが確実です。
事前予約制の「税務相談」も利用できます(電話で予約可能)。
また、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」では、相続税申告書を画面上で作成・印刷できる機能が提供されています。
参考:国税庁 確定申告書等作成コーナー https://www.keisan.nta.go.jp/
自分で申告するか、税理士に依頼するかの判断基準
相続税の申告は、原則として自分で行うことが可能です。
しかし、以下の条件に当てはまる場合は、税理士への依頼を強くおすすめします。
不動産が含まれる場合
不動産の評価額(路線価や倍率方式による計算)は複雑で、計算の仕方次第で評価額が大きく変わります。
適切な評価を行うことで、節税につながるケースも多くあります。
相続人が複数いてもめている場合
相続人間で意見が分かれている場合、中立的な立場から申告をサポートしてくれる税理士の存在は心強いです。
財産の総額が大きい場合
財産総額が1億円を超えるようなケースでは、適切な控除の活用や税額の計算ミスによる損失リスクが高まります。
税理士に依頼する費用(報酬)は、一般的に相続財産総額の0.5〜1.0%程度が目安ですが、事務所によって異なります。
依頼する前に複数の事務所に見積もりを依頼し、対応内容と費用を比較してください。
なお、税理士報酬は葬式費用ではないため、葬式費用控除の対象にはなりません。
しかし、相続税申告の準備全体として必要な費用であることを念頭に置いて、早めに動くことが大切です。
高崎市周辺で相続税に詳しい税理士を探す場合:
群馬県税理士会 https://www.gunma-zeirishikai.or.jp/
まとめ:葬式費用控除を正しく使って、余計な税負担をゼロにしよう
この記事でお伝えした内容を、改めて整理します。
葬式費用控除の基本
- 葬式費用は、相続税の課税価格から差し引ける(相続税法第13条)
- 課税価格が下がることで、相続税額が直接減少する
控除できる費用
- 葬儀社への支払い全般(祭壇・棺・会場費など)
- お布施・戒名料・読経料
- 火葬料・納骨料・搬送費
- 通夜振る舞い・精進落としの飲食費
- 会葬御礼品の費用
控除できない費用
- 香典返しの費用
- 墓石・墓地の購入費用
- 初七日・四十九日などの法要費用
- 参列のための交通費・宿泊費
証明書類について
- 領収書がない費用(お布施等)は、支払記録メモで代替できる
- 支払日・支払先・金額・目的を明記すること
申告手続き
- 申告書「第13表」に費用の明細を記載する
- 申告期限は死亡を知った翌日から10ヶ月以内
- 高崎市在住の場合は「高崎税務署(027-323-2261)」が窓口
葬儀が終わった後の悲しみと疲労の中で、相続税の申告まで考えるのは本当に大変なことです。
でも、葬式費用控除は「知っているかどうか」で大きく差がつく制度です。
この記事を手元に置いて、一つずつ確認しながら進めてください。
不安な点は遠慮なく税務署や税理士に相談してください。
正しい知識で、余計な税負担のない申告を実現しましょう。
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